『地獄物語』は安政の大獄に関係して「青山の獄」のち「浅草の獄」に禁錮された著者『世古恪太郎』が、獄中生活の見聞や、同囚や牢番より聞いた珍談奇談を書き綴った雑記随筆。
蘭医森川鞏斎より厚遇を受けたこと、浅草の卜者山口千枝の話、夥しい虱の話、材木屋須原屋角兵衛(書林須原屋茂兵衛の一統)の手代長七の豪遊譚、獄中の読書、勝麟太郎の話、同囚の修験の語る江戸に於ける卜者の上手のこと(第一に根岸の青雲堂、但し故人、第二に浅草の山口千枝、第三に芝神明前の白龍子、但し親の赤龍子よりも劣る)、二条左府公の公達寛斎(三条前内府の猶子)のこと、火事の際の獄の「開ケ放し」のこと、浅草の獄中で将棋の名手(実は宗桂の子)と将棋を指した話(著者はかつて浪華で平塚瓢斎と将棋を指したことあり)、獄の魁(牢名主)と亜魁より古今三鳥と諫鼓鶏について問われた話等、面白おかしく描かれた手記です。
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