メェだいと学ぶ著作権ミニ講座

第5回:電子ジャーナルを利用する際に気をつけるべきこととは。
※記事内容は2021年12月現在の情報に基づくものです。
インターネットを通じて電子ファイルの形で論文が手に入る電子ジャーナルはとても便利です。しかし電子ジャーナル特有の気を付けなければならないことがあります。
図書館のニュースで時々大量ダウンロードのために電子ジャーナルの利用が止まっていますというお知らせを見たことがないでしょうか?
大量ダウンロードについて名古屋大学附属図書館の電子ジャーナルのページにこう書いてあります。
c. 個人利用の範囲を超えた大量のデータのダウンロード、プリントアウトは契約により禁止されています。
特にプログラム等を利用した機器の自動操作による意図的な大量のデータ収集は厳禁されています。手動であっても、
無差別的な連続ダウンロードは大量とみなされる場合があります。
著作物は「著作権」のことだけ考えていればいいと思っていると、実は「契約」というものもあるのです。
これは大学と電子ジャーナルを提供している出版社の間の「契約」です。著作権法上の問題はなくても、契約上違反とみなされる行為は許されていません。
大量のダウンロートが一体どの程度のものなのかは出版社が決めていて、我々には明かされていません。そのため一度にダウンロードするときに大量すぎないように気をつけなければいけません。
例えば、文献管理ソフトの複数のPDFファイルを一括で自動ダウンロードできる機能を使うことは禁止されています。
それ以外にも電子ジャーナルや電子ブック、データベースを利用中に、Webブラウザの「リンク先読み機能」が使用されると意図せず多数のリンク先にアクセスしてしまい、
大量ダウンロードとみなされ、該当資料へのアクセスが大学全体で遮断されることがあります。
また、他大学の電子ジャーナルを利用する場合は、やはり大学と出版社との「契約」により学外者の利用が認められた電子ジャーナルのみ閲覧することができます。
これは電子ジャーナル契約をしている他大学の図書館から電子ジャーナルのコピーを取寄せる場合も同じです。
なお、著作権法の観点から見ると、ダウンロードした電子ジャーナルをメールに添付するなどして他人に配布するような行為は著作権者の権利侵害になる可能性があります。
第4回で述べているように複写(ここでは電子ファイルのダウンロード)はあくまで複写を希望する人が1部のみ複写する場合許可されるからです。
ちなみに、大学図書館間では、文献の取り寄せにあたり電子ジャーナルのPDFファイルの受送信を行うことがありますが、これに関しても、著作権者の権利侵害にならないようガイドライン
(大学図書館間協力における資料複製に関するガイドライン)に基づき厳格に運用され、文献の取り寄せを依頼した利用者にPDFファイルを提供することは認められていません。
参考文献(URLの確認日はいずれも2021/12/21)
- 名古屋大学附属図書館の電子ジャーナル公正利用の注意 https://www.nul.nagoya-u.ac.jp/ej/ej_atten.html
- リンク先読み機能についての名古屋大学図書館ニュース https://lws.nul.nagoya-u.ac.jp/news/ja/denshi/2020/210119
- 大学図書館間協力における資料複製に関するガイドライン https://julib.jp/documents/coop/ill_fax_guideline_supplement.pdf
東海国立大学機構 図書館 蔵書構築プロジェクトチーム 著作権・デジタル化サブチーム