雑誌の価格高騰とあいまって、学術情報の拡散が顕著となっている。それは例えばホームページという形態で現象している。Kayのホームページ(http://www.scils.rutgers.edu/special/kay/kayhp2.html)のように、それまでの流通と異なる価値観を見つける人たちもいるが、これは可能性を示した一つのモデルと言えよう。
今日の学術情報の中でデジタルメディアがどのように扱われているのか、引用という視点からみると、依然として端緒的な段階である。レフェーリのある雑誌で、デジタルメディアが引用でどのくらいあるか代表的雑誌をスキャンして調べたところ、2~6%で、それとて重要な部分ではなかった。New England Journal of Medicineにおいては、1%であった。唯一物理系のみがデジタルメディアを高い率で引用している。特にヨーロッパでは高い。ただ、それとても全体では10%強の割合に過ぎない。
Ⅴ.デジタルメディアの今後 ― 図書館情報サービスの観点から
図書館の情報サービスにおけるデジタルメディアの視点からは、特にアメリカにおいては、ALA、ARLなどのように、幅広い活動のなかで、図書館から誰でもがデジタルメディアを使えることとして、利用を明確化した方向を打ち出しているし、また、DOI: Digital Object Identifierの試み(http://www.doi.org)は、デジタルメディアゆえに、出版社がなくなったりして情報が突然消えることを防ぐため、それぞれの論文の1単位、図表や章ごとにもIDをふるなど、弱点をカバーするとともに、論文が雑誌という媒体にのっている必然性があるのか、という情報の流通・伝達手段の問題をも提起している。状況的な問題提起ではあるが、未だ確定的な方向とは言えない。
このような団体や機関の動きに対して、Academic Libraryの方の対応はどうであるかをみると、ピッツバーグ大学図書館の事例で、戦略計画運営委員会(Strategic Planning Steering Committe)の活動(http://www.library.pitt.edu/)が目をひく。これは、2001年にユーザーはどうなるかの姿を描きながら、一つの端末で全てが行えるように、明確な活動を開始している。